過去への手紙(さくらさひめの大しごと→くらしのアナキズム)

久しぶりにブログに戻ったので、12年前の自分に、返事を書いています。もう全く別の人に感じられて新鮮。

okanagon.hatenablog.com

あれから、この絵本「さくらさひめの大しごと」をこちらに引っ越してきても探してみました。しかし図書館にもなく、手にも入らず、いつか忘れてしまいました。

でも最近手にとった『古事記』に手がかりがありました。

天岩戸事件が起こった後の話です。事件の原因、お母さん(イザナミ)が死んで悲しくて大暴れした須佐之男命(すさのおのみこと)は、全財産を没収され、髭も切られ、手足の爪も抜かれ、したたかに打ち据えられて、高天原(たかまがはら)を追い出されました。

追放になった須佐之男命は食物を大気津比売神(おおけつひめのかみ)にお求めになった。そこで大気津比売神は、鼻や口や尻からおいしい物をとり出し、さまざまに調理して、さし上げたが、須佐之男命はその有様を隠れて見ていらっしゃって、汚いことをして料理をさし出すと思われて、すぐに大気津比売を殺してしまわれた。ところが、殺された大気津比売の頭から蚕(かいこ)が、二つの目から稲の種が、二つの耳から粟が、鼻からは小豆が、女陰からは麦が、尻からは豆が生まれ、その身体はすべて植物となった。そこで、神産巣日御祖命(かむむすひのみおやのみこと)は、この植物をとって種とした。(梅原猛古事記』第一章国生み *五穀の起源 より)

この部分がはじまりでした。

絵本でさくらさひめは、大気津比売神の娘。ひめは植物から種をとり、袋に入れると、鳥に乗り、海を渡り、たどり着いた場所で、人々と一緒に、開墾や灌漑をはじめます。そこへ、山がまたげるくらいに足の長い足名椎(あしなずち)という男と、手が丘の先まで届くくらい長い手名椎(てなずち)という女がやってきます。2人はそれぞれ自分の長い手足に困っていたところを、さくらさひめが仲をとりもって結婚しました。足名椎が手名椎を肩車すると、ちょうど2人で1人の大きな人のようになり、さくらさひめを手伝って大活躍します。ここの絵がとても面白かった。最後は、実りが訪れてめでたしめでたし、というストーリーだったと思います。

さくらさひめは、神産巣日御祖命(かむむすひのみおやのみこと)とその子供の少名毘古那神(すくなびこなのかみ)からイメージを膨らませて創作されたものかもしれません。(少名毘古那神は、ガガイモの船でガチョウの皮を被ってやってきて大国主神と中国(なかつくに)を造る)

手名椎と足名椎の娘は、古事記では櫛名田比売(くしなだひめ)です。須佐之男命に大蛇(おろち)から助けられて妻になる。これは「五穀の起源」に続く「八岐の大蛇(やまたのおろち)」の物語です。

それにしても、みんなで汗水流して開墾や灌漑をして国造りしたところへ、天照大神が「そこは私の治める国だから」と家来を派遣するのは、ちょっと無体な気がします。

死者の書』に出てきた天若日子が、天から派遣されて、地元の娘と結婚して、その土に馴染んでしまって、上の意向を無視してしまったのも、人情としてわかります。バラバラだった神話世界が、少しずつ頭の中で繋がってきました。

国家の成り立っていく様を見ているようです。

松村圭一郎は「くらしのアナキズム」で、そうした国家から逃げて、そこに組み込まれず独自に暮らす自治組織が、世界中のあちこちにある(あった)のを紹介していました。

これは別のお話になるので、また今度。

mishimasha.com