- 作者: 谷川俊太郎,別役実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/01/15
- メディア: 単行本
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能は、「霊」この世ならぬものと人が普通に言葉や心をかわすものが多いですね。子をさらわれ、狂ったように息子を探してはるばる旅してきた母親が、その子が死んで埋められた隅田川のほとりに、ちょうど一年後の日に行き当たり、子どもの霊と出会う「隅田川」。。その心情には、驚く程すっと入っていけて、涙するものがありました。
けれども霊が出てこない物語もあります。「自然居士(じねんこじ)」は、私にはまるでキリスト教のお話のようだと思われたのですが。。
京の雲居寺(うんごじ)で自然居士が説教をしている所に、一人の女の子がやってきて、死んだ両親の供養にと居士に着物を差し出します。その着物は「みのしろごろも」、女の子が自分の身を人買いに売って、その代金として手に入れたもの。やがて堂内に現れた2人の人買いに女の子は連れて行かれてしまいますが、これを居士は説教を途中でやめて追う。琵琶湖のほとりで追いついて、人買いと居士は押し問答になります。人買いが「自分達のルールでは一度買ったものは返してはいけないのだ」と言うのに、居士は「私たちのルールでは人を不幸から救えなければ、二度と自分の草庵にはもどれない、だからどこまでもこの女の子とともに行く」と返すのです。人買いは根負けして、腹いせに居士に岸辺で舞を舞わせるのですが、ついに居士のひたむきなその姿心に打たれてひざまずき手をあわせる。。こうして居士は女の子の手をひいて京へ帰り、人々はあれが居士のまことの説教と伝えたというお話。。
日本人が深いところで持っている宗教観に、「自然(じねん)」がかかわっているという話を、哲学者の内山節さんの授業でうかがったことがあります。その授業で「親鸞」「風姿花伝」をとりあげた回を重ねて思い出しました。
親鸞
http://d.hatena.ne.jp/okanagon/20081009/1223514868
風姿花伝
http://d.hatena.ne.jp/okanagon/20081022/1224628648