シャカ

 油野誠一 「シャカ」
シャカの生涯を子供にもわかるように描いたこの絵本を、ほんのときどき息子が眠る前に「きょうはこれよんで。」と持ってきます。わかってんの??と思いますが、息子はシャカが母からふわりと生まれでてすぐ7歩あるくところがお気に入りで、「天上天下唯我独尊」という台詞は自分で必ず言うと決めているようです。油野誠一は、私が子供の頃に好きだった絵本「おんどりのねがい」の作者だったので、書店でこの「シャカ」を見かけたときに思わず買ってしまったのでした。「おんどりのねがい」の絵の風景は、私の幼い頃の記憶の風景と重なります。家でにわとりを飼っていましたし、お月さんの顔、明るいみかん畑。。ピンクのレンゲ畑。暗い夜道に浮かび上がる白い道。絵は大変すきでしたが、幼い私には日が沈むと魔法がとけてしまうことが大変不満だったのを憶えています。「人生は美しい」という言葉にひかれてこの「シャカ」をとりあげましたが、絵本の終盤、晩年のシャカが弟子のアーナンダに

「アーナンダよ、おまえもこのけしきを見るがいい。
 ヴェーサーリーはうつくしい町だ。
 この大樹もすばらしい。
 この世界は、すばらしい。
 この人生は、甘美なものだ。」

と語るシーンがあります。そのページには夕日にたたずむシャカとアーナンダともう一人の弟子が描かれています。つづいて、

わかいとき、シャカは「生きて行くことは苦しむこと」といいましたが、いまはんたいのことをいうようになりました。さとりをえてから、この世のほんとうのうつくしさに目をひらかれたのでしょうか。

という文がつづきます。これまで仏教の本を沢山読んでもなかなかわからず、この文に驚きを感じました。「生きて行くことは苦しむこと」が私の中でクローズアップされていたからでしょうか。こう書いているうち、また家の本棚に眠っている本を手に取ってみたくなりました。

追記:本棚に眠る本。中村元ブッダ 心理のことば・感興のことば」「ブッダのことば」「ブッダ 悪魔との対話」梅原猛著「仏教の思想」