ふたりのイーダ

小学生の頃だったろうか。ぷつぷつと今過去に見た映画がよみがえってくる。母に連れられて市民会館へ見に行った映画「ふたりのイーダ」。ごつごつした顔の椅子がしゃべる。ぱたぱた足をばたつかせて座る小さな女の子のふっくらした白い足。黒々と藻の流れる川の水底に椅子と女の子が流れていく映像が記憶に残っている。雨、水、湿度、生のなまめかしさと、死の影。子供心にこの映画がとてもこわくて、あの8月6日から帰ってこない女の子を待ち続ける椅子がかわいそうで悲しかった。話の筋はまったくわからなかったのだけれど、原爆を扱ったものだということは後で知った。昨日息子と行った図書館ではじめて原作を手にとってみた。読むに時がある。これまで読みたいと思わなかったのだけれど。。松谷みよ子さんが、渾身の力をこめ自らの深い所と対話して書いたのが伝わってくる。今回の大震災の様々なことを通して、私はようやく戦争をあつかってきた様々な作品を自分は同じ地平に立って読めるような気がしている。くしくも、ふたりのイーダは、「転生」が1つのテーマにもなっている。繰り返し。。忘れてはいけないこと。人類が体験してきたこと。平和に慣れると、どこか浮ついて、先人の残す痛烈なメッセージは表面的にしか受け取れなくなっていた気がする。。今ようやく受け取れる。私はいびつになっても自分に刻み付けようと思う。

ふたりのイーダ―子どもの文学傑作選

ふたりのイーダ―子どもの文学傑作選