父の友人

父の高校時代からの友人が昨日、ひょっこり実家に来たそうです。
「墓標にまだ正郎の戒名が無い。早く刻まんと。」
その前に墓へ参ってくださったのでしょう。。このおじさんは、子供の私にとっては、ひげ面で、声も大きくて恐怖の存在でした。破天荒でしたが、とても気のよい人だったと今はわかります。母によれば、父の晩年までよく家に来ては、朝から夜まで、将棋に興じたり、とりとめもない話をして過ごしていたとか。こういう濃い人間関係が、ついこの前まではあったのになと思います。

「わしはトーマス・マン森鴎外を、正郎は芥川龍之介を語ってお互い影響しあったものだ」
父の鴎外好きは、このおじさんの影響もあったのでしょうか。そういえばトーマス・マンは、中学の頃、父に「魔の山」が面白いと聞いて読みました。「魔」の意味が当時はよくわかっていなかったと思います。

「今小説を三部かけもちで書いている。「ダイナマイトを運ぶ女」これは江戸川乱歩賞用、「霊簿の碑」これは芥川賞用。」

芥川賞用は、父が主人公で、ストーリーは祖父も含めて展開していくそう。。二人は田舎の文学青年でした。いつか小説を書くのが二人の夢でした。何だか、面白い展開になってきました。今度田舎へ帰ったら、そのおじさんと会って話しを聞いてみようと思いました。父が高校時代に書いた「あけび」という小説が見つかるかもしれません。。

追記
母は、おじさんは、1ページも書いていないと思うよ。と言います。そうかもしれません。。でも、それでもいいじゃぁないですか。。