1月の本棚

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

小学6年生男子が主人公。塾仲間サッカー仲間3人組。人が死ぬところを見てみたい、と近所のボロ屋に住む老人の観察をはじめるが、見られはじめた老人は逆に元気になっていく。そして生まれた老人との交流。物質的には一見満たされている少年の背後に垣間見える家庭は、母親がキッチンドランカーになっていたり、父親が他に家庭をつくり母子家庭だったりどこか薄暗い。その負荷を小さい身体いっぱいに受けているのが感じられる。けれども、老人と親しくつきあううちに段々彼らにも変化が起こってくる。夏の庭とはおじいさんのボロ家の庭。そんな庭がどの少年にもあってほしいと思う。
新版 指輪物語〈2〉/旅の仲間〈下〉

新版 指輪物語〈2〉/旅の仲間〈下〉

だいじょうぶ3組 (講談社文庫)

だいじょうぶ3組 (講談社文庫)

中陰の花 (文春文庫)

中陰の花 (文春文庫)

お寺の住職さんとおがみやさんというのは、その考え方において遠くて、意外と近くに居るもののようだ。恐山のご住職である南直哉さんも、恐山のおがみやさんについて書かれていた。おがみやさんを肯定も否定もしないところはこの小説でも同じだった。実は私も、奈良の西大寺の隣に、有名なおがみやさんがいると友達に聞いて会いに行ったことがある。とてもやさしそうな小柄なおばあさんだった。お寺の隣というのをおがみやさんも選んでいるような気がする。この小説には、臨終間際のおがみやさん、4年前に子どもを流産した住職夫婦というのが出てくる。仏教というのが論理で構成されていてプラクティカルな男性性親和的なものだとすると、おがみやさんは論理を度返しにして儼然とそこにある苦痛を癒そうとする女性性親和的なものに思える。僧侶である人は、その両義的なものに肯定も否定もせず気づいている。。仏教に惹かれるのはそういう所だなぁと思える小説だった。