奇跡のリンゴ

おとついの夜、夫の部屋から突然笑い声。。おかしくなったのではありません。本を読んであきれるほど面白い時、夫は笑うくせがあるのです。その日買ってきた本は、

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

思い返せば先日、パソコンを見ていた夫が「おぉ!」とすっとんきょうな大声をあげました。何よ!びっくりするじゃないと思っていたら、私を呼ぶので行ってみると、雪の中にたわわに実る真っ赤なリンゴと笑顔のおじさんの写真が。。それは、茂木健一郎のブログでした。彼が出演するNHK番組プロフェッショナル仕事の流儀で、以前取り上げたリンゴ農家、木村秋則さんのところへ訪ねていった写真だったのです。。

「これ、ものすごくなってない?」
「すごい。。無農薬でこれだけ今年できたんだね。。すごいわ。」

30年前、木村さんがリンゴの無農薬栽培へ挑戦という「地獄への駆け足」をはじめて6年、病害虫との闘いにあらゆることを試みて失敗し経済的にも一家7人困窮。。もう万策つきた。自殺しようと縄をもって岩木山へ入りました。でも木にかけようとした縄がそれ、ふと周囲の景色に目を向けた時、木々の中に光るように立っているリンゴの木があるのを見つけたのです。思わず駆け寄ってみるとそれはドングリの木であったのですが、葉っぱを調べ病害虫にやられているのがほとんどなく健康なことを見ました。次に土をほって口に入れてみたのです。それはりんご畑の土とは全く違い、雑草が生えふっくりと空気を含み、つんとする酸味があった。。それは土中の放線菌がかもしだしているものらしいのです。。そしてドングリの根を調べるとその柔らかい土の中に実によくはっていて、白い繊毛もふわふわとしていた。それで、大事なのは根っこだ、土だと気づいたのです。。テレビ番組では、そこに苦労のピークがあってあとは順調にいったように編集されていたのです。しかし!本では、その後、花が咲き実がなるまでに数年、そして最初にとれたリンゴもピンポン玉くらい、大阪まで売りに行ったら1個60円でもちっとも売れなかったという悲惨な話が続くのです。。それに、夫は思わず、心からの賛辞として笑ってしまったのでした。。私だったら泣き笑いでしょうか。。

「そういえば、小林益川理論の論文も最初数年はちっとも引用されなかった。南部さんも、日本の学会では反応はよくなかったと言ってたよ。湯川秀樹も中間子論を発表して、自分はすごいことをやったと確信しているのに、周囲はちっとも反応してくれなかった。ボーアに、君は新しい粒子をつくるのが好きなんだねと皮肉られたり。それであちこちへ論文を送ったりしたんだよ。。」

と夫。。これまでにない新しいことができたとき、本当にすごいんだからこぞって世界が認めてくれる、と思ったら大間違い。。なんですね。。タイムラグがある。。おとついの深夜のノーベル賞受賞までには、実に37年。

今現在水面下のもがきにあり、孤独な闘いをしているみなさん、あぁあの人もあの人もそうだった!!勇気をだしましょうね。。そして、私も昨日一気に読みました。読み聴かせへ出かける時、「これがわたしのリンゴ」息子をながめるとき「これがわたしのリンゴ」とつぶやいていました。そして、自分自身が「リンゴ」。仕事の帰り道、あぁ一人一人が皆奇跡の「リンゴ」なのだと思いながら雑踏を歩きました。